HACCPに沿った衛生管理の制度化
HACCP制度化の概要
平成30年6月13日、15年ぶりとなる食品衛生法の改正が公布され、原則としてすべての食品事業者(90万件以上)に対して、食品衛生上の危害の発生を防止するため「HACCPに基づく衛生管理」の導入が求められることとなりました。HACCPの制度化は、法律の公布日から起算して2年以内に施行されます。ただし、施行後さらに1年間の経過措置期間が設けられており、結果として3年間程度の準備期間が設けられているということになります。2016年の6月までがタイムリミットとなります。
※ HACCPとは Hazard Analysis Critical Control Point
Hazard(危害)Analysis(分析)Critical(重要)Control(管理) point(点)の略語で、「危害分析重要管理点」と訳されます。
材料の入荷から加工、出荷の全行程において、どの段階で微生物や異物混入が起きやすいかという危害を事前に予測・分析し、危害を防止するための重要管理事項を定め継続的に監視、記録し異常の際はすぐに対策を取るため、危害を未然に防ぐことができるシステムです。
今回の制度化においてはHACCP認証は不要
厚生労働省は今回の制度化において認証の取得は不要としており、地方自治体や業界団体の認証を受けろということではないようです。
HACCP7原則に基づいた衛生管理を行う。あるいはHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のいずれかを行うこととしています。
制度化の対象
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行う対象事業者とは(案)
従業員数が一定数以下の小規模業者や一定の業種とは、以下となります。
・食品の製造又は加工を行う者のうち、一の事業所において、 食品の製造及び加工に従事する者の総数が 50人未満の者。
・当該店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者(例:菓子の製造販売、食肉の販売、魚介類の販売、豆腐の製造販売等)
・提供する食品の種類が多く、変更頻度が頻繁な業種(例:飲食店、給食施設、そうざい・弁当の調理業等)
・一般衛生管理のみの対応で管理が可能な業種(例:包装食品の販売、食品の保管、食品の運搬等)
HACCP制度化で何をする
食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するために「HACCPに基づく衛生管理」について計画を定めなければならないこととされています。
ただし、飲食業などの一定の事業者については、その取り扱う食品の特性等に応じた「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でよいとされています。
特に、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」については、業界団体が作成した業種ごとの「手引書」に基づいて実施すればよいとされています。
ISO22000とは
ISOはInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称であり、そのなかでISO22000は、食品安全マネジメントシステム(FSMS=Food Safety Management Systems)の国際標準規格で、正式名称は「食品安全マネジメントシステム-フードチェーン(食品の生産から消費者に届くまでの全ての段階) のあらゆる組織に対する要求事項」で、食品の生産から加工・販売に至るまで、あらゆる段階の組織に適用が可能となっています。
ISO22000はフードチェーン全体における食の安全を守るための仕組みとして、品質マネジメントシステムISO 9001と食品安全のリスク分析の手法HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の二つの概念を融合して開発された規格と考えてください。
取得のメリット
納入先からの食品安全に対する要求に応えることができます。
組織上の食品安全管理のレベル向上と安心の提供
社員および関係する従業員の責任、義務、品質等の意識の向上
法規制を明確にすることにより、組織体制の強化とコンプライアンス(法規制への遵守)の推進に繋がります
海外の企業を含む取引要件を満たすことができます
HACCP制度化の取り扱い
HACCPの制度化においてISO22000やFSSC22000等の民間認証を取得されている場合は、「HACCPに基づく衛生管理」の要件を満たしているとされ、保健所による立入検査等の際に負担が軽減されることになりそうです。
FSSCとは
FSSC 22000は、オランダに本部を置くFSSC財団 (Foundation FSSC 22000)が開発した認証プログラムで、Food Safety System Certification 22000の略です。食品安全マネジメントシステムのISO22000に、ISO22000に含まれる前提条件プログラム(PRP)の一般衛生管理の部分の要求事項をより具体 的に記述した産業分野ごとにISO/TS 22002-1などのPRP術仕様書と追加要求事項を組み合わせた規格となります。
ISO22000 + ISO/TS22002-1(食品製造) + FSSC22000 追加要求事項
取得のメリット
食品の安全な提供に関するリスクの低減できる。
法令順守(コンプライアンス)の推進ができる。
従業員のモラル、衛生意識、品質、安全に対する意識向上
顧客や消費者からの信用と信頼を獲得し優位性が向上でき、海外企業を含む取引先要件を満たすことができる。
フードディフェンス(食品防御)への対応強化が図れる。
HACCP制度化の取り扱い
HACCPの制度化においてISO22000やFSSC22000等の民間認証を取得されている場合は、「HACCPに基づく衛生管理」の要件を満たしているとされ、保健所による立入検査等の際に負担が軽減されることになりそうです。